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ミルフィーユ

木の実をついばむ鳥達が
僕の足音に驚いて
いっせいに飛び立つのを
不思議な気持ちで眺めてた

子供の頃から欲しいモノがあると
それを何枚も絵に描いては
なんとなく手に入れた気分になって
我慢するというおかしな癖があった

今僕が欲しいのは この大きな大きな古い木

いつもの様に木を描いてると
ちょうど反対側に人影
君も僕に気付いた様だ
軽く会釈して挨拶

いきなり君の方からアプローチ
「どうしてこの木を描いてるの?」
僕の妙な癖の話を聞かせると
君はくすっと微笑みながら立ち上がり

「いっしょだね」と言って 僕の隣に席を移した

空を舞う鳥達 その真下の木の前で
風に吹かれ舞い上がる千の木の葉たち
欲しくて欲しくて手に入れられない
その途中 君と出会った

いつしか僕らは毎日の様に
並んでこの木を描いていた
お互いの絵を見比べ
不思議な気持ちで笑ってた

同じモノを見ているのになぜだろう
二人の絵の雰囲気は違ってた
その内僕は見せなくなってった
君のがずっと上手いのもあったけど

気付いたら木の横に 君の顔を描いていたからだ

空を舞う鳥達 その真下の木の前で
風に吹かれ舞い上がる千の木の葉たち
欲しくて欲しくて手に入れられない
その対象 君に変わってた


僕はあの場所へ行かなくなった
木の絵が描けなくなったから
その代わり 君の絵ばかり上手くなっていく
それなのに 素直に君に会いに行けない

なぜなら 君が欲しいのは僕ではなく
あの木だという事を分かっているから

分かってしまうから・・・・・・



ある日僕に手紙が届いた
差出人は君の名前
封を開けるとそこには
一枚の木の葉と短い手紙







君は相変わらず木の横で
絵を描き続けていた
君はあの時と同じ笑顔で
僕に絵を見せてくれた

そこには大きな大きな古い木と
笑っている君と僕の顔



君の手紙の内容を思い出す・・・



『お久しぶりです
会えない日が続いて寂しいです
あなたが欲しがっているこの木を
あなたに届ける事はできませんが
せめて 木の葉を一枚送ります


最近 あなたの絵ばかり描いています』




空を舞う鳥達 その真下の木の前で
風と踊る九百九十九の木の葉たち そして微笑む一枚の葉
欲しくて欲しくて手を伸ばして
その先の 君の手を今

お互い ぎゅっと 握った・・・
by karasimutard | 2005-03-26 05:56 | ☆それはまた別の話
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